SUSHIBOYが大好き

 突然ですが皆さん、SUSHIBOYなめてませんか。日本語ラップ界のおちゃらけ役、もしくは色もの的な感じで彼らを見てはいませんか。バカ言っちゃいけません。彼らはこの国に初めて現れたBeastie Boysなんです(暴論)。オシャレでオリジナルでパンクでポップ,

知性とユーモア溢れるヒップホップユニットなんです。

 

 SUSHIBOYSを好きか嫌いかは「LOUD」のMVを10秒見れば分かります。ママチャリを素っ裸でこぐ姿を延々と映すだけの映像。ここにはアイデアと笑いと、意味のない常識に対するちょっとした異議申し立てがあります。

 ボクが初めて彼らを知ったのは「ブルーハワイ」のMVでした。「縁側でchilling」、「市民プール」、「冷やし中華」といったいなたい世界観のライム。サンバイザーにオレンジTシャツという有り得ないファッション。田んぼ、田舎道、軽トラ、スーパー、近所のじじいというローカルな映像。全てがこれまでの日本語ラップにはなかった価値観で作られていて、ボクは笑いながら感動したものでした。

 後期のBeastie Boysはその政治性と遊び心を「世界をより良くするためのパーティー」なんて表していましたが、ボクはSUSHIBOYSの音楽にもそれに似たフィーリングを感じます。ただのバカ騒ぎにはない「知性」がそこにはあって、それが彼らを特別な存在にしていると思うのです。

 SUSHIBOYSが今後、Beastie Boysのようにチベット独立を支持したりプロテストソングをリリースするかどうかは分かりませんが、この先も何をするのかとても楽しみなグループです。

 とにかくみんなSUSHIBOYSのMVを見ましょう。少ない予算の中、アイデアとユーモアで人を笑わせるセンス。意味不明だけどなんか楽しそうなフィーリング。大人になれない子ども達のお祭り。クリスマスの朝みたいなドキドキがたくさん詰まっていますよ。

​ 2022年7月

​『roman candles|憧憬蝋燭』が最高な理由

 なんか地味なアルバムだなー、フォークな感じに行きたかったのかなー、曲も地味だし売れないだろーなー。なんて思ってました。ごめんなさい。これ最高のアルバムです。地味でも何でもないです。他のバンドがガチャガチャうるさいだけでした。

 

 雑に言うとポイントは5つです。

  ・現代的なくぐもった音色

  ・最小限で最大級の効果をもたらす精密なアレンジ

  ・ポップなのに上品なメロディ

  ・透明感のある声と歌唱

  ・分かりやすさを周到に避けた素晴らしい歌詞

 

 日本では珍しく北米のインディロックのような現代性を手にしつつ、ロックバンドにしか出来ない繊細な表現をしていて、このバンドの偏差値の高さには頭が上がりません。

 派手さがない分アコースティックな質感があり、本当に毎日聞いてしまいます。

 形ないものを追う

 甘い鼓動を聞く

 変わらずシャイなままではダメだと

 大人ぶってる君は

 淡い希望を言う

 誰もがきっとそんな輝きを

 見逃して生きている

 (waltz | ワルツ)

 Laura day romanceは控え目に、小さな声で、一言では言えない何かを表現します(ちょっとキセルを思い出します)。その美しさにため息と涙が止まらないのです。

 まぁただ余計なことを言うと、このバンド売れるんですかね。慎ましやかで繊細で上品な、悪く言えばまわりくどいこの音楽が、分かりやすさと短絡性の暴力が溢れるこの国で居場所を得ることができるんでしょうか。だってLaura day romanceの良さはTikTokじゃ絶対に伝わらないワケです。「wake up call」のどよーんとしたギターの気持ちよさは万人受けしないワケです。最近もシャムキャッツという偉大なバンドが解散したばかりなので、ボクは勝手に心配しています。

 どうかLaura day romanceという美しい花が、無知で無自覚なロックファンに踏みつぶされませんように。

​ 2022年7月

​ファックユーと叫ぼう

 全然ノーマークだったんですがGAYLEの「abcdefu」、めっちゃいいですね。新しさとか斬新さとか全然ないんですが、そんなことどーでもよくなるくらい最高の曲ですね。「とにかく世界中にファックと叫びたい」という感情の爆発、たまりません。

 ポップソングは「ファックユー」と叫んだ時点でだいたい正解になるというのがボクの持論です。だって「ファックユー」と言わなきゃいけないこと多すぎるじゃないですか。そこでここではボクが大好きな「ファックユーソング」をいくつか紹介したいと思います。

 リリー・アレンのさらりと毒を吐く感じがボクは大好きなのですが、彼女の「Fuck You」はかわいい曲調の中で差別主義者を刺しまくる名曲です。重厚なテーマなのにユーモアを使ってポップに歌いこなすところが、イギリス人らしくて好きです。

 Cee Lo Green の「Fuck You」は、とにかく笑って泣けて踊れます。ネガティブな状況を描きながらも眩いばかりのエネルギーが炸裂するソウルミュージック。音楽の最高の瞬間がここにはあります。

 日本だとサニーデイ・サービスの「FUCK YOU音頭」や星野源の「Same Thing」もいいですね。「Same Thing」のオロノ、マジかっこよくて惚れそうです。

 ロシアだウクライナだ言ってる今だからこそ、ボク達も叫びましょう。Fuck!

 2022年3月

​カネコアヤノ

 ボクが2021年に1番聴いたのはカネコアヤノでした。「ヒップホップもいいけどロックもいいよね」なんて気分にさせてくれたのが彼女やラッキーオールドサン、Helsinki Lambda Clubやシャンモニカでした。ヒップホップにはないグッドメロディ、心にスッと入ってくる言葉、ぼやけた音色、そんなものに心が躍る1年でした。

 その中でも群を抜いて好きなのが、カネコアヤノです。

 触れたら壊れてしまいそうな繊細さと、そんなの爆音ギター一発でぶっ飛ばせることを知っているタフさ。この両方を持っているのが彼女の強みだと思います。

 ボクが1番好きな歌詞はこれです。

 

 栄えた街の 夢よりも争うことから

 いつまでも 守り合おうね 私たちは

 (栄えた街の)

 

 こんなの泣くじゃないですか。

 それに音もいいんです。時代錯誤なフォーク的ソングライティングにロックなバンドサウンドをぶつけつつ、モダンな演奏と音色を混ぜ合わせた、新しいんだか古いんだか分からないサウンド。誰にもマネできないスタイルの歌唱。「みんな違って、みんないい」とか言いながら画一的な曲を乱発するJ-POPに比べて、本当にオリジナルです。

 音からも歌詞からも溢れ出る「はみ出し者」なフィーリングと、それゆえの儚さと美しさ。ボクはスピッツの1stアルバムを思い出しました。

​ 2022年1月

​OASIS

 オアシスって結局あんまりかっこよくないところが最高だったと思うんです。同世代のレディオヘッドやブラーなんかと比べて、音楽的な偏差値は低いし、普通に頭悪いじゃないですか。上記の2バンド(中流階級出身)と比べて、コテコテの労働者階級・・・、ってゆうかただのヤンキーですからね。

 「Whatever」のPVで、こっち睨みながらポケットに手を突っ込んでるリアムを見て下さい。こいつらは本当だったらマンチェスターの他のヤンキー達と同じように、クソみたいな仕事してパブでケンカして女抱いて寝るみたいなクソ人生を送るはずだったんです。それがなんの間違いかたまたま世界1の作曲家とボーカル兄弟がいたせいで、たまたま世界1のバンドになっちゃった連中なわけです。

 だから、結局は勢いで作った1stと2ndを超える作品は作れなかったし、その後の音楽的な劣化も激しかったし(後半は頑張ってましたが)、最終的にはケンカしまくって解散しちゃうわけですよ。とほほ。

 でもそんなただのヤンキーだからこそ、イギリス中の誰もがオアシスを愛したし、ボクもいまだに彼らを愛しています。

 オアシスが出てきた頃って、パンクもグランジも終わってギターバンドが行き先を失くした時代だったんです。そんなときに、ジャーンとギター鳴らして「最高な曲を作って歌えばいいんだよ」と言ったのがオアシスでした。

 「オレたちはビートルズが好きだからビートルズやるよ」と言ったのがオアシスでした。

 「小難しい打ち込みとかやってないで、ギターを爆音で鳴らせばいいんだよ」と言ったのがオアシスでした。

 「なりたいようになってやるぜ(Whatever)」と言って結局、自分たち以外の何物にもなれなかったのがオアシスでした。

 カートコバーンが死んで、ベックが「I'm Loser」とぼやいて、レディオヘッドが「I'm creep」と泣いていた時代に、「オレ達は自由だ」とまくし立てていたドン・キホーテがオアシスでした。

​ みんな「んなワケないじゃん笑」とツッコミつつも、涙が止まらなかったのです。

​ 2019年10月

​シャムキャッツ

 今の時代、魅力的なロックバンドってなかなか生まれにくいと思うんです。きちんと過去や海外の音を咀嚼して自分のものにしているオープンマインドな人達はこの国ではほとんどがヒップホップ・R&Bに流れてますし(SALUとかKID FRESINOとか)、歌詞もリアルでユーモアなものを書ける人達はやっぱりヒップホップ・R&Bに流れていってるような気がします(SUSHIBOYSとかゆるふわギャングとか)。

 もっとざっくり言っちゃうとセンスのある人達はヒップホップ・R&Bをやって、ダサい人達がロックをやる。なんて言ったらいくらなんでも言い過ぎでしょうか。くるりとかに殴られそうですね。でも曽我部恵一がヒップホップアルバムを出したのは、そーゆーことだと思うんです。ちょっとムリやりですが。

 そんなこんなで、きちんと過去や海外の音楽を咀嚼しつつ、リアルで粋な曲を書くバンドをこの国で探すのは本当に難しいです。でもシャムキャッツはそんな逆風をものともせず、たゆまぬ努力とセンスで世界に通用する音と言葉とバンドアンサンブルを手に入れた、数少ないジャパニーズ・ロック・バンドなんです。

 例えば「GIRL AT THE BUS STOP」。シャムキャッツの最高傑作と名高いこのシングルですが、まずプロダクションが最高です。2010年代以降のインディロックのロウファイな感覚を取り入れた、生々しいのに洗練されたプロダクション。イントロのギターの音色だけでこのバンドの耳の良さが分かります。尖ったところのない、まろやかなのに存在感のある独特な音色。高音をジャカジャカ鳴らすしか能のない日本のゴミバンドは、みんなお手本にしたらいいと思います。

 そしてBPM。95前後のゆったりとしたBPM。なのに死ぬほどグルーヴィー。特にファンキーなベースはよだれものです。BPMをムリやり上げることでしかビートを作れないその辺のバンドとは一線を画す、見事なバンドアンサンブル。The La'sの「ゼア・シー・ゴーズ」にも引けを取らないんじゃないでしょうか。

 さらに極めつけは素晴らしいボーカル。オリジナリティがあって艶があって弱さと強さがあって、1度聞いたら絶対に忘れない声があります。生々しさを損なわない録り方もグッドです。

 歌詞もまた最高です。一人称を使わない部分と使う部分を分けることで、物語の中から登場人物が飛び出してきたかのような錯覚を起こす見事な手法。登場人物の生活が透けて見えるような、具体性のある描写。日常の本当にささいな感情を切り取る筆さばき。自分のことを語るのに精一杯なクズバンドにはない、美学に貫かれた慎ましやかなコミュニケーションがここにはあります。

 日本1のバンドはくるりかシャムキャッツでいーんじゃないでしょうか。

​ 2018年8月