​ファックユーと叫ぼう

 全然ノーマークだったんですがGAYLEの「abcdefu」、めっちゃいいですね。音的な新しさとか斬新さとかは大してないんですが、そんなことどーでもよくなるくらい最高の曲ですね。とにかく世界中に「ファック」と叫びたい、そんな気持ちがストレートに表現されていてたまりません。

 全然上手く機能してないこの社会で「ファックユー」と叫ぶ必然はあり過ぎるほどあるわけで、だからこそ「ファックユー」と叫ぶ曲にボクはいつも心が踊ってしまいます。

 リリー・アレンの「Fuck You」もその1つです。リリー・アレンのさらりと毒を吐く感じがボクは大好きなのですが、この曲もかわいい曲調の中で差別主義者を刺しまくりです。どんな重厚なテーマを歌っても、ユーモアを使って重くなり過ぎないようにするのがイギリス人らしいですね。

 最悪な状況で「ファックユー」と叫ぶこと。それによってとんでもないパワーを表現すること。そんな正しい「ファックユー」の使い方の見本が、Cee Lo Green の「Fuck You」です。とにかく歌詞を見ながら聞いてください。説明はいりません。ネガティブな状況にいるはずなのに、眩いばかりのエネルギーが炸裂するソウルミュージック。音楽の最高の瞬間がここにあります。

 日本だとサニーデイ・サービスの「FUCK YOU音頭」や星野源の「Same Thing」もいいですね。話は変わりますが「Same Thing」のオロノ、マジかっこよくて惚れそうです。

 ロシアだウクライナだ言ってる今だからこそ、ボク達も叫びましょう。Fuck!

 2022年3月

​カネコアヤノ

 ボクが2021年に1番聴いたのはカネコアヤノでした。「ヒップホップもいいけどロックもいいよね」なんて気分にさせてくれたのが彼女やラッキーオールドサン、Helsinki Lambda Clubやシャンモニカでした。ヒップホップにはないグッドメロディ、心にスッと入ってくる言葉、ぼやけた音色、そんなものに心が躍る1年でした。

 その中でも群を抜いて好きなのが、カネコアヤノです。

 触れたら壊れてしまいそうな繊細さと、そんなの爆音ギター一発でぶっ飛ばせることを知っているタフさ。この両方を持っているのが彼女の強みだと思います。

 ボクが1番好きな歌詞はこれです。

 

 栄えた街の 夢よりも争うことから

 いつまでも 守り合おうね 私たちは

 (栄えた街の)

 

 こんなの泣くじゃないですか。

 それに音もいいんです。時代錯誤なフォーク的ソングライティングにロックなバンドサウンドをぶつけつつモダンな演奏と音色を混ぜ合わせた、新しいんだか古いんだか分からないサウンド。誰にもマネできないスタイルの歌唱。「みんな違って、みんないい」とか言いながら画一的な曲を乱発するJ-POPに比べて、本当にオリジナル。

 音からも歌詞からも溢れ出る「はみ出し者」なフィーリングと、それゆえの儚さと美しさ。ボクはスピッツの1stアルバムを思い出しました。

​ 2022年1月

​OASIS

 オアシスって結局あんまりかっこよくないところが最高だったと思うんです。同世代のレディオヘッドやブラーなんかと比べて、音楽的な偏差値は低いし、普通に頭悪いじゃないですか。上記の2バンド(中流階級出身)と比べて、コテコテの労働者階級・・・、ってゆうかただのヤンキーですからね。

 「Whatever」のPVで、こっち睨みながらポケットに手を突っ込んでるリアムを見て下さい。こいつらは本当だったらマンチェスターの他のヤンキー達と同じように、クソみたいな仕事してパブでケンカして女抱いて寝るみたいなクソ人生を送るはずだったんです。それがなんの間違いかたまたま世界1の作曲家とボーカル兄弟がいたせいで、たまたま世界1のバンドになっちゃった連中なわけです。

 だから、結局は勢いで作った1stと2ndを超える作品は作れなかったし、その後の音楽的な劣化も激しかったし(後半は頑張ってましたが)、最終的にはケンカしまくって解散しちゃうわけですよ。とほほ。

 でもそんなただのヤンキーだからこそ、イギリス中の誰もがオアシスを愛したし、ボクもいまだに彼らを愛しています。

 オアシスが出てきた頃って、パンクもグランジも終わってギターバンドが行き先を失くした時代だったんです。そんなときに、ジャーンとギター鳴らして「最高な曲を作って歌えばいいんだよ」と言ったのがオアシスでした。

 「オレたちはビートルズが好きだからビートルズやるよ」と言ったのがオアシスでした。

 「小難しい打ち込みとかやってないで、ギターを爆音で鳴らせばいいんだよ」と言ったのがオアシスでした。

 「なりたいようになってやるぜ(Whatever)」と言って結局、自分たち以外の何物にもなれなかったのがオアシスでした。

 カートコバーンが死んで、ベックが「I'm Loser」とぼやいて、レディオヘッドが「I'm creep」と泣いていた時代に、「オレ達は自由だ」とまくし立てていたドン・キホーテがオアシスでした。

​ みんな「んなワケないじゃん笑」とツッコミつつも、涙が止まらなかったのです。

​ 2019年10月

​シャムキャッツ

 今の時代、魅力的なロックバンドってなかなか生まれにくいと思うんです。きちんと過去や海外の音を咀嚼して自分のものにしているオープンマインドな人達はこの国ではほとんどがヒップホップ・R&Bに流れてますし(SALUとかKID FRESINOとか)、歌詞もリアルでユーモアなものを書ける人達はやっぱりヒップホップ・R&Bに流れていってるような気がします(SUSHIBOYSとかゆるふわギャングとか)。

 もっとざっくり言っちゃうとセンスのある人達はヒップホップ・R&Bをやって、ダサい人達がロックをやる。なんて言ったらいくらなんでも言い過ぎでしょうか。くるりとかに殴られそうですね。でも曽我部恵一がヒップホップアルバムを出したのは、そーゆーことだと思うんです。ちょっとムリやりですが。

 そんなこんなで、きちんと過去や海外の音楽を咀嚼しつつ、リアルで粋な曲を書くバンドをこの国で探すのは本当に難しい。でもシャムキャッツはそんな逆風をものともせず、たゆまぬ努力とセンスで世界に通用する音と言葉とバンドアンサンブルを手に入れた、数少ないジャパニーズ・ロック・バンドなのです。

 例えば「GIRL AT THE BUS STOP」。シャムキャッツの最高傑作と名高いこのシングルですが、まずプロダクションが最高です。2010年代以降のインディロックのロウファイな感覚を取り入れた、生々しいのに洗練されたプロダクション。イントロのギターの音色だけでこのバンドの耳の良さが分かります。尖ったところのない、まろやかなのに存在感のある独特な音色。高音をジャカジャカ鳴らすしか能のない日本のゴミバンドは、みんなお手本にしたらいいと思います。

 そしてBPM。95前後のゆったりとしたBPM。それなのに死ぬほどグルーヴィー。特にファンキーなベースはよだれもの。BPMをムリやり上げることでしかビートを作れないその辺のバンドとは一線を画す、見事なバンドアンサンブル。The La'sの世界的な名曲「ゼア・シー・ゴーズ」にも引けを取らないんじゃないでしょうか。

 さらにシャムキャッツといえば、素晴らしいボーカル。オリジナリティがあって艶があって弱さと強さがあって、1度聞いたら絶対に忘れない声があります。生々しさを損なわない録り方もグッドです。

 そんなボーカリストが歌う歌詞もまた最高です。一人称を使わない部分と使う部分を分けることで、物語の中から登場人物が飛び出してきたかのような錯覚を起こす見事な手法。登場人物の生活が透けて見えるような、具体性のある描写。日常の本当にささいな感情を切り取る筆さばき。自分のことを語るのに精一杯なクズバンドにはない、美学に貫かれた慎ましやかなコミュニケーションがここにはあります。

 日本1のバンドはくるりかシャムキャッツでいーんじゃないでしょうか。

​ 2018年8月